令和のはじまり。
「令和」の年号が決まった日、長男が報告してくれました。最後の「和」が聞き取れなくて、レイ…何?と聞き返して初めて知った言葉が「令和」。漢字と発音を聞いたとたんに素敵なイメージがわぁっと拡がったのを憶えています。これはそのときに書き留めた印象で、出典の万葉集のことも、梅の花のある風景にも心を向けていなかったのです。けれど、後で聞いた色々な話が、私の初めの印象と合っているようで、面白かったり不思議だったり、なんだか嬉しかったりしていて、忘備録することにしました。
*
「令和」は黎明、律令、静謐、といったイメージを連想させ、しずかな心になるのを感じる。多くの書類に記入することになる年号だから、心が落ち着く文字はとても心地よい。きっと手元で見ながら書き込むたびに、心を清冽な川の流れに沈めたように、引き締まる思いがすることだろう。
平和の「和」であるこの字は、この国、日本を表す字でもある。
そして、冷静、のイメージを喚起させる令の字は、同じ「和」の字を持つ昭和の時代にひとつに熱し、国全体が熱狂のうえに築いた自国の、そして他国のおびただしい犠牲を通観して横たわっている字に思える。そして、3.11をはじめとしたこの国の自然災害による犠牲や、生き残った私たちが時代を透過するためのレンズのようにも思える。冷静に。見通す目を養う時代。まるで字が、そう言語りかけてくるようだ。
令の音は礼の音ともつながり、しかし、令となった。律令の令でもあり、皆できめた決まり事を守り、そののちにこそ発する和をも連想させる。ここにもし窮屈さを感じるのであれば、それは心しておく手続きだ。
けれども「和」の字の本来の意味にも気を留めておきたい。同音の「話」にもイメージを充ててくるこの字は、おしなべて熱狂とは別のところにある異なる考え方との鉱脈を、おたがいに探求しながら、静かな出会いを重ねる話し合いが求められる。そんな時代の様子を見越しているのだとも言える。
「令和」、この二つの文字列は、この国でどのように人を人たらしめるかという個人の姿勢に、しみ込むように影響を与えていくのだと思う。
3月17日 作家の高山羽根子さん朗読会@本の場所
朗読会は18:00から。
こんなにたくさんの人が来ている(!)と驚きながら入場された高山羽根子さん。1月に発行された『居た場所』のなかの『蝦蟇垂(がまだれ)』を朗読してくださいました。
『居た場所』を開きながら高山さんの声を聞き、作中の主人公の女性が淡々と料理していく過程を伺っていると、その出来上がっていく蝦蟇料理の品がとても美味しそうで、まるで目の前にあって今すぐにも食べられそう(!)こんなに美味しそうなら、朗読会のあとはこの食事を特別に再現した食べ物のお店で懇親会が開催されてもおかしくない。なんならその懇親会だけ目当てにくるひとがいてもおかしくないかもしれない、などと、勝手な妄想が膨らみます♪
例えばp135の
”身の方はよく叩き、おろし生姜と併せてつみれ汁にすると臭みも消え体が温まり滋養がつく。このところ気温が乱れているので、疲れて気をぬくと風邪をひきやすくなるから具の多い温かな汁は夕餉の膳に欠かさない。味噌仕立てにしてもよいが、今日は香りの良いゆずの皮があるので葛粉で軽くとろみをつけた澄ましにする。”
などが『蝦蟇垂』の中では特に美味しそうで、やけどしそうに熱いゆずの香りのおつゆをすするときの幸福感が、思わずふうふうしたくなるイメージで立ち上がります。そして、作品の最後のページでも、主人公の女性が献立を考え始め、味噌だれの香ばしい蝦蟇料理を想起していく様子が、まだ作中で作られてさえいないのに、やっぱり脳裏においしく浮かんできました。
読み返してみると、会話のなかにある話し方などから日本昔話に出てくる農家のような、囲炉裏のある部屋やその近くを流れる川で女性がお料理しているのを連想するのですが、それに対して川から眺めた”男”が勤める観測所という研究施設が近代的な四角いコンクリートの建物として連想されて、作中の”女”と”男”に、それぞれが所属する場所、世界を認識する手立てのちがい、なども象徴されている気がしてきました。
そして、「観測しなければ見ないでもすむのではないか」と考える女性の、シュレディンガーの猫みたいな不確定さに片足をのばしている雰囲気と、それでも蝦蟇を使ったこのお料理の、しっかり地に足がつけられているリアリティーのバランス。このバランスが、危なげなく安心して読者を離陸させてくれる配合なのだろうな。と思いました。
●朗読後にしてくださったお話。
まず、制作工程を、公開してくださいました。
作品のある舞台となる地図を印刷したものや、イメージを象徴する絵、シーンなどをアメリカのドラマでシリアルキラーみたいな人が現場の地図などを貼るようにとても大きなスケッチブックに、まとめられていました。後ほど主催者の方も、TVドラマで犯人を捜索する側の人がつくる犯人のプロファイリングでもこういうのを作りますね、と捕捉されていましたが、まさにそんな感じのスケッチブックでした。この物語の地図をつくるまでの作業が30%くらいとのこと。ものによってはここまでが60%の作業になるそう。短編では50%くらいになるとのことです。ちなみに、この作業には、ネットもスマホも使われないとおっしっていました。
私も作品を起案するときにまず、イメージボードを作っていたのですが、イメージの断片をただ寄せ集めて配置しただけで、それぞれのイメージの関連性もなく、シーンごとにもしておらず、印象的な会話の断片を集めても、それをどうオーガナイズするか見えないまま、それでも何もないよりは…と進め、そのまま作品もフラッグメントの集合と化していたので、その各絵を意味付けして物語としてまとめる作業がこういった形でできるということを知れたことが、とても大きかったです。
この物語の地図には、絵の他に、外出先などで書かれるという断片的な会話のシーンなどの文章も貼り付けられており、一度書き込んだ場所に、トレーシングペーパーのような付箋にさらに書き込みをして重ね、「一方その頃」など、同じ時間軸の違うところで行なわれている出来事なども追加されていくとのことでした。
高山さんがおっしゃるには、美術大学で絵を描かれていたとき、小下図大下図(こしたずおおしたず)、という日本画の軸ものではない大きい絵に下絵を描くときの手法を、この物語の地図にも使われたそうです。
日本画家には部屋の襖や天井の注文がくるそうなのですが、それは、小さいものを描いてそれを大きくする作業なのだそうです。、例えば鶴などを図案とすると、そのスケッチがまずあり、「壁に描いてください、襖に描いてください」と注文を受けてから、そのスケッチを拡大してそれを下図にする。人などだと群像図にする、とのこと。街中の小さい人たちを鳥瞰図で描くそうです。そこに置かれた街の人たちやその状況を複数描いていき、それを並べて一つの街にする、群像劇なのだそうです。
その方法を基本にされる高山さんの書き方はサーガにはなりにくく、「一方その頃」がたくさん続いていく、映画でいうとグランドホテル形式なのではないかということでした。
続いて、創作の動機についてのお話です。
小説を書くことを続けようと思った動機が、通っていた講座の先生であった編集者さんが「こんな感じで続けてみたなよ、書き続けてみなよ」とおっしゃったり、創元のSF短編集を編集した大森望先生からの賛辞だったため、編集者さんをリスペクトし、信頼を置いているそうです。初稿の手前の0稿や1,0稿と呼ぶ原稿を編集者さんに読んでいただく時は、その後のやりとりにも信頼を置いていて、そのことで世に出る原稿ができあがっていくこの過程をとても大切と思われているそうです。最近では直接読者とのやりとりのできるネットへの作品投稿や電子出版もあるけれど、編集者さんの介在がもっともっとあってもいいのではないかな、と思われているとのことでした。
(このお話については、わたしも深くうなずきました。しかし…、これはもちろん、高山羽根子先生レベルの作品を書かれる方だからこそできるお話なのだと、胸に深く刻んでいます。私はゲンロン創作講座2期生として1年創作講座に通いましたが、本当に本当にお話を書こうとしても、まずまともな作品を書けない日々を送ってきていたうえ、編集者さんに貴重なお時間をいただいてアドヴァイスしていただいたにもかかわらず、思ったように作品として仕上げられない状態が続いていて、まずもってプロの編集者さんの貴重なお時間を使うこと自体がなんだか申し訳ない気がしてしまって…。講座でお金を払って見ていただくのも申し訳なかったくらいの作品を、まずは見ていただけるくらいの実力をつけたり、商業化できるほどの話題を作成してから実践で実力をつけていく動機を得るために、KDPやカクヨム投稿で鍛錬にはげむ、というのは、選択としてとても有効な方法なのではないかと感じています。)
その後、芥川龍之介の『奉公人の死』というお話を例に、作品の初読性、アウラを失わせない作品紹介はどうすればいいのかについて逡巡されている旨をお話されたり、ご自身の作品のテーマについてお話をされました。
作品を書かれる時、書き手として、10回読んだら10回違う物語が立ち上がってくるように。短編であったら3つか4つのテーマを作り、そのテーマが一つに収束されないように作られている、とのことでした。
また、高山作品の本質に迫る重要なお話だと思うのですが、
「主人公などに言いたいことを語らせすぎるのはコワい」とおっしゃっていました。
「自分の書くものとしてはどういう風に読んでも”物語”たりえるように。気をつけすぎるくらい気をつけても足りないのではないか?」
「最初に書き始めたことを書きおわり、あまりにも同じことを言いすぎていないか?ということに気をつけている。」そうです。
「徐々にいろんな要素が混ざる、読み始めたところと読み終わった時、全く違ったことを言っている人はいないように、全く同じことを言ってる人がいないように気をつけている。」
「言うことがブレちゃうとあまり良くない、という時代ではないですか。(けれど)一つの意見に自分の脳を集約させることのこわさ。人の脳ってブレる。ので、とっちらかったものをどうとっちらかったままであまり集約させすぎることなく物語として何らかのきちんと楽しむたり得る状態に持っていくのか、分類するのがさっきのスケッチブックで…」
「物語というのはあるていど整理は必要だけれど、同じことを言わないように、なんなら全く反対のことを言わせることで物語を離陸させる。最初のうちよりも最後にものすごい離陸をさせる。途中離陸してそこからスッと下げてみる。当社比で長い文章(100枚、200枚)だと徐々に読んでる人が気付かないくらいの離陸の仕方。もしくはずっとおさえておさえてすごく離陸して、またおさえておさえて。」
その他、起点はラストの絵を決めてから。や、ビジョンとして最初と最後の絵を作って、そこをつなげていく作業では、フィッシュボーンチャートの時間経過をイメージされていること、物語の最後は言い切らず、正解のないようにしていること、主人公を誰が読んでも自分と感じてもらいたいため、すごくフラットに作ろうとしていることなどもお話されていました。
そして、スペインの留学先で現地の学生さんに叱られたそうですが、日本にいて漫画とはご縁がなく、『AKIRA』や『新世紀エヴァンゲリオン』、ジブリ作品なども一切知らずに過ごされてきたとのこと。漫画よりは妹尾河童さんの旅のスケッチやダヴィンチの、絵を描いたとなりに絵で描けないことを文字で書く、そして文章で書けないようなことを絵で描く作品をよく見られていたそうです。映画には、とても影響されているそう。
大好きな映画である『フィールド・オブ・ドリームス』のような作品や、アピチャッポンの『ブンミおじさんの森』のような作品が描けたら、とおっしゃっていました。また、コーエン兄弟(であってるかしら?)が好きで、気持ちが沈むとDVDを見られているとおっしゃっていました。
●朗読会の最後
会の最後には、『本の場所』のオブジェ『本』の字の大きな立体に、高山さんがサインをされ、そのパフォーマンスの撮影をしました。
個人的にお話を伺いたかったことがあったのですが、サインの前にお邪魔してしまったのと、そのあとお知り合いの方とのお話がありそうだったので、そっと帰ってきました。
ご本人に朗読していただけた上、いろいろなお話が伺えて、とても参考になり、興味深かったです。
高山羽根子さん、主催された『本の場所』さん、どうもありがとうございました。
2/2維嶋津さん「いえ喰ういえ」電子出版記念イベント!に行ってきました♪
『架空街区』 人はなぜ架空世界を求めるのか?
遅くなりましたが、維嶋津さんの「いえ喰ういえ」電子出版記念イベント!メモを置きに来ました。
11歳になる長男を連れて参加したのですが、トークが本当に面白かったです。長男も、登壇者さんの著作を読まないとわからない内容かと思って緊張していたら、そんなこともなく楽しめて面白かった。と言っていました。下の子たちを引き取る時間が迫っていたので、なんと八島さんのトークを残しておいとまする失礼をしてしまったのですが、そこまでのトークも、本筋からの脱線を含めて面白くて仕方なかったです。
ところどころ、筆が追いつかなかったところがありますが、以下、ノートに書いたメモからの記録です。
*
始まりは、維嶋津さんをMCにした新城カズマさん、今和泉隆行さん、八島遊舷さんのトークからでした。
良いか悪いかは別として、無限に設定を作り込みたくなる衝動がどこから来るのか、創作背景なども含めてお伺いしたい、と維嶋さんが尋ねると、
「楽しいから。なんで楽しいかなんて考えないでやっている。編集さんが止めに来る。」と、まずは新城さんよりお答えがありました。
どんな瞬間にうぉぉーって、興が乗るんでしょうね?と維嶋さん。
「時間変化、あるのかな?」と新城さん、考え込む様子をみせられた後、「他のことやらなくてもいい時間。」と、答えられます。
新城さんの架空世界の設定期間は盛り上がりに波があるそうです。この時期は貯金がある。この時期は締め切りがない。など。
「私自身は、楽しくて紙と筆記用具さえあれば、独房でも逃げずにやっているはず。」
ここから、地図を書かれている今和泉さんが、
「”楽しい”と思う瞬間。未知の世界に対する好奇心それに近い。」と、架空世界への衝動について語られます。
今和泉さんは「インプットが弱くてアウトプットで理解するタイプ」なのだそうです。
「自分の手で再現して、”分かった!”と初めて手応えを感じられる。旅行でマチュピチュなどを見に行った人が、史跡を見ながら”ここに人がいたんだ”と感じるのに近い。」
「どこにピークがあるって作ったものを発表する気はなかった」運河を入れたり湖を入れていたのは中学生くらいの頃で、ご自身が書かれた地形があって、それをアップデートするのが最近。「たとえばお城の近くに工場があるのはありえない。と自分の知識がアップデートされた瞬間、このニセモノが許せなくなる。いやニセモノなんだけど…。」
八島さん、
「私の場合は、テーマがまずあって、そのテーマのために地図がある。
トールキンなど、作り込まれた世界の引きずり込まれる魅力はよくわかるんですが、自分ではそこまでいかない。」
「読者が見て、さらにそこから発想が広がるものを作りたい。その先はどうなるんだろう?ということは、読者のかたに先を作ってほしいなと思う。」楽しさのピークについては、「私が面白いと込めたことと、読者が受け取っている面白さにズレがある。…ある人は人口について興味を持っているかもしれない。歴史的な建物につないで街の歴史にフォーカスしているかもしれない。自分が作ったものに、誰が読むんだろう…(メモが途切れています、)」
維嶋さんが「自分の中にある何かテーマをはっきり言語化できますか?」と尋ねると、
「私ははっきり言語化しますね」と遊舷さん。
「もともと意識していたのが明確化してきたのがSF創作講座での梗概選出の仕組みで、それに慣れてきた」とのこと。この梗概を作る方法に問題があるとすれば、(書いているうちに?)勢いがなくなってくる。こと。
維嶋さんは、「いい梗概が書けたら次に行きたくなってしまう」
遊舷さんは、「私はいい梗概ができたらそのまま書くようにしている」
ここで新城さん、
「小説家というのは孤独でもなんでもなく、人に会わずに営業しなくてはいけない。」
文字面だけで、しかも読む前にお金を払わなければならないというナゾのシステム。どうやって目の前の新宿や神保町から来ている編集を説得するか。しかも2時間で…、と説得するためにわかりやすく内容を説明する様子を披露されていました。たとえば、永井豪のキューティーハニーを1行で説明するのにタラオバンナイ×変身小説、など。
そして、デビュー後に知ったそうですが、手順の一つとして、梗概は便利だとおっしゃっていました。自分の面白いと思ったことを読んでくれる人にどう説明すればいいのか。自分の考えていることを構造化するために。
八島さん、(おそらくうなずきながら)
「梗概は分かりやすくないと(ダメです)。」
ここで維嶋さん、
梗概前のうじゃうじゃ感について言及されます。
「梗概前のうじゃうじゃ感はどこからできて…(メモ不明瞭)
八島さん
「それは”ワンノート”でまとめている
すべてメモ書きしている」
八島さんは、梗概の中でそれを構造化するのだそうです。
「私は梗概=地図だと思っていて、時間的な因果関係が地図になっているのが梗概です。
地図は何枚も書かなければいけない。混沌とした作品世界を筋立ててわかりやすくする。
地図はわかりやすく、目的を持って削っていく。同じく梗概も削る。固有名詞を出すと伝わらない。
ここで新城さんが、京都造形大学での授業で左右の目の違うキャラについて延々と書く生徒さんが毎年必ず一人はいる、というお話をされます。僕も若い頃は同じようなことをしているうちのひとりだったのですがと断られた後、「葛藤の時間変化を書くのが梗概だとすると、分解写真的にシーンが焼き付いている。彼らのものの捉え方はアニメ的。アニメのモックアップや戦闘画面のように若い人たちはやっている。」
目の色髪の色だけでそのうち小説を書く人が出てくるかもしれない。とお話を維嶋津さんが結ばれてから、会場に対して『梗概』についてのの説明がありました。
梗概(コウガイ):400字で2枚くらい。A4一枚。ベースの設定。葛藤、時間の流れ、どんでん返し。オチを書く。
*
本日は、ここまでにします。
読みにくくてごめんなさい、メモ、まだまだあるんです。
だんだん、さらに面白かったことを思い出してきました!
また続きをかきますね♪
詳細(イベントページより転載しますね)
イラスト・動画・漫画・詩・小説……いま、さまざまな人が、さまざまな方法で、自分の作品を発表しています。
人はなぜ、架空の世界を形にしようとするのでしょうか。その衝動はどこからきて、どこに向かうのでしょうか。
「架空世界×〇〇」をテーマに、ゲストとのトーク、および展示が行われました。
■登壇ゲスト(敬称略)
作家。架空言語研究者。グランドマスターを務めたプレイバイメールゲーム『蓬莱学園』をベースとした小説『蓬莱学園の初恋!』で、1991年にデビュー。代表作として『島津戦記(新潮文庫nex)』『星の、バベル(ハルキ文庫―ヌーヴェルSFシリーズ)』『サマー/タイム/トラベラー(ハヤカワ文庫JA)』など。
・今和泉 隆行
1985年生まれ。7歳の頃から空想地図(実在しない都市の地図)を描く。 大学生時代に47都道府県300都市を回って全国の土地勘をつける、情報デザイン、記事執筆、社員研修、テレビ番組やゲームの地理監修・地図制作に携わっている。2015年に東京ミッドタウンデザインハブ「◯◯◯も◯◯◯も◯◯◯も展」、2017年に都城市立美術館「南九州の現代作家たち Message2017」出展。主な著書に「みんなの空想地図」(2013年)。
・八島游舷
作家。「天駆せよ法勝寺」にて2018年 第9回 創元SF短編賞を、「Final Anchors」「蓮食い人」にて2018年 第5回 日経「星新一賞」グランプリおよび優秀賞を受賞。
2/16 新井素子先生『ショート・ショート・ドロップス』トーク 覚書
2016年2月16日(土) 新井素子先生『ショート・ショート.ドロップス』トークの、覚書です♪
「もう一人呼ぼうかと思ったんだけれど。」と、新井先生。
普段は一人で出ることはないトークイベント、それでも複数いる作家さんのうち一人だけを選んだり呼ぶのもどうかと思われたとのこと、今回はおひとりでのご登壇でした。
*
トークの目安として、400字詰原稿用紙一枚分が、普通の人の1分。
今回は40分話すので本来なら40枚原稿を書かなければならない。
でも、新井先生の場合は読むのが早めなので70枚いっちゃう。
アナウンサーの人は話しながら時間把握できるけれど、時間把握できるモノ書きはおそらくそれほどいない。いや、できるひともいるかもしれないけれど。
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女性だけのショート・ショートがないので、それでは編集しよう!と進めてみたが。なぜ世にショート・ショート女性作家編がないのか、よっく分かった。女性作家のショートショート自体が、大変少ない。
大倉タカシさんや江坂遊さん田丸雅智さんなど、ショートショートはすべて男性。
矢崎在美さんの『初恋』はものすごく気に入って、あんまり気に入ったので、旦那さんにその場で一本朗読したぐらいで、その後も編集さんがそうだろうと思われたのか、帯のお仕事も頂いたくらいだった。しかし、編集するにあたっては、女性作家ショートショート、この『初恋』以外が見つかんない。
そこで星新一賞ショートショートひろばを探したのだが、気に入った作品が見つかっても、プロになってくれないと連絡先がわからない。著者がどこに行ったかわからない問題が発生。女性作家さんのショートショートは意外と長い、平気で40枚くらいはある。そこで今度は短編集をあたった。稀に短編集があっても連作短編が多い。一本80枚くらいある。80枚だと4、5本で本一冊になるので、編集さんが頼みやすいのだと思う。
星新一賞のショートショートコンテストは枚数ではなくて、何文字で募集しているので編集しにくい。しかも、一人の素人が質の揃ったショートショート10枚を30本は難しい。
この本(『ショート・ショート・ドロップス』)にも面識のない方が2名。
最近のライトノベル作家、女性を探したくても性別がわからない。著者の写真はない。猫、イラスト、鳥の写真などが代わりにあり、略歴には生年月日もない。人の履歴が全くわからない。まさか、個人情報とか言わないよね。なぜ不明にしているのか全くわからないのですが、作家の性別かくしてどうなるんだ?
3年経って、30枚以上のものを外すと短編集として成り立たないことがわかったので、入れることにした。50枚以上でとても入れたい、ととてもとても迷った作品があったのだが、さすがにこれはショートショートではない、と断念した。
他、眉村卓さんが奥さんが入院された時に1日に一編ショートショートを作られたお話、新井先生のデビュー時のお話と、当時はショートショートが書けなかったのでショートショートランドという講談社の雑誌に取材記を書かれたお話、そのとき短編作家さんたちは同期の結束が固くてうらやましいくらい仲良しだったとつづき、掲載媒体のお話になりました。
ショートショートは本にしにくい。
企業の社内報に作家のショートショートを載せる場がある。昔は多かった。
編集部の予算と広告予算の規模が大違い。広告予算でのショートショートの依頼が多かったのではないか。
人工知能学会編のショートショートは学会誌に載っていた。
学会誌なので、横書き、読点、句読点がそれぞれ本当にピリオドとカンマで掲載されていた。それを縦書きに直して短編集を編んだ(『人工知能の見る夢は〜AIショートショート集)』文春文庫)。その時の作品にショートショートがあったので2本拝借して形になった。これがなかったらもっと大変だった。
星さんもよくおっしゃっていたが、原稿は400字1枚いくらの世界。
短編と長編の1枚が同じ値段なのは本当におかしい。短編は一本いくらにしてほしい。
田丸さん江坂さん太田さん。ショートショート作家さんは好きでしょうがなくて書いている。紙媒体の雑誌はどうぞ潰れないでほしい。
*
<質問への応答など>
デビュー時と現在とご自身で変わったところはありますか?
変わったなぁと思うのは、昔は本当にわかんなかった。
自分で何やってるのかわからなかった。
30年やって、自分はどうも小説が書けるらしい、とわかった。
40年やって、どうも言われた枚数を書けるらしい、とわかった。
電子書籍について(新井先生は、断然、紙の本推し)
スマホになったら読むかも?
あなたはすでにその本を買っています!と言ってくれるのはいい。
パンデミック系の作品はかかれませんか?
もう怖いからから…。致死率100%の病気。そう思うと『天冥の標』の冥王斑って、コワいよね〜。(ここで『天冥の標』のお知らせ。)って人の作品の宣伝してどうすんだ。
編集の収録順番について
とにかく『初恋』はトップと決まっていた。
なんとなくかわいい、楽しい。しみじみ、切なく、ちょっと笑える。と、読んだ時の印象をメモしてこの順番がいいかな?と試行錯誤している。
*
その他、新刊ニュースがたくさんありました♪
声が大きく上がって楽しみなのが、『星から来た船』。上(5月)、中(6月)、下(7月)と新装版の刊行ニュース。それぞれ太一郎さんと真紀子さんの出逢い、ケンカ、(未定?)とオマケ短編つきとのこと。
それに、柏書房から出るという『扉をあけて』『ラビリンス(迷宮)』『ディアナ・ディア・ディアス』の装幀が、なんだかすごそうでした♪
2/16SFファン交流会 覚書 小説・映画編
2019年2月16日(土)に参加したSFファン交流会で、そのまんま。トークのお話を伺いながら聞きかじったメモ書きを置きます♪(本当に、メモ書きです。)
*
読みやすかった。
クラークだと元からあっさりしている。
原文がくどい文章をスッキリ翻訳するってどういう感じなのですか?
『放浪世界』
『マグネット島通信』ものが足りない世界がゆっくりすすむ
『無限大の日々』銀河規模。物理法則が書きかわるお話
『アンドロイドタイプワン』Web雑誌で連載、家電アンドロイドのお話。
『ヘテロゲニア・リンギスティコ?異種族言語学入門?』
人狼やスライムの世界が舞台。研究してものを知る楽しみが味わえる。
一推し編(SFマガジン百合特集から?)
『超稼働ガールズ』ライトノベルの主人公がフィギュアになって出てきて主人公の周りに出現する話。
『骸積みのボルテ』絵柄はかわいいが設定上主人公に人体損壊多し。(でも面白いらしい)
『有害無罪玩具』人によく似たケモノ。自意識とは何か?自分以外の時が止まった女性がいたずらをして過ごす物語。
*
聞き取れなかったところや「オフレコ」と伺ったので削ったところがあります。聞き間違いもあるかと思います。気づかれたことがありましたら教えていただけるとたいへん助かります。あと、漫画は資料の中で紹介された分が5冊で、口頭で伝えられた分がとてもディープで会場の評価が高そうなものがあって、紙にメモ書きしたので明けたらまた、書き足す予定です。
発言者さんをきちんと思い出して書こうとすると、結局わからなくなってUPしなくなることが分かったので、とりあえず、そのまま記録をのせることを目的としました。
天王丸景虎さんに伺った面白い記事を書くための前準備2@SF創作講座新年会
こんばんは!昨日の
天王丸景虎さんに伺った面白い記事を書くための前準備の続きです。
昨日は1、ログラインを書く。について書いたので、
今日は2、パッケージとコンセプトを先に作ってしまうについて書きます。
そして、そのまんまこれだけなのですが、
パッケージとコンセプトを先に作ってしまう
『Canva』というアプリを教わりました。
伺っただけで、実は私もまだインストールしていないのですが、このアプリを使って、作品のイメージを固めたうえ、まずはパッケージを作ってしまうのだそうです。すると、イメージボードのように創作の方向性を定めることができるので、作品を書いている途中で意図した「面白さ」から外れずにすむ。
これは、ゲームの商品を作るときに、よく使われている手法だと伺いました。転じてSF創作講座の梗概を提出するときにも、このCanvaを使ったイメージを貼り付けると、場合によってはアピールにもなるのではないかと思います。
2期では八島遊舷さんの作品でこのような意図を持った写真を毎回見かけましたし、梗概選出が多く、賞を取られた麦原さんや高岳さんも、数式やトリックを表現する際や作中の機器などの説明に図を載せられていました。
SF創作講座の梗概アピールだけでなく、ご自身の書きたいアイデアの可能性をためすがめつするツールとしても、核心に届くように読み終わった後に読者に感情が残るモノを目に見える形でイメージ化する手立てとしても、ご自身で試してみる、もしくは集まって試す機会を作ってみるなどするのも良いと思います。
私もすぐにできるのだったら、入れて試してみればよかった(!)
ひとりだときっと、使い方とか一つわからないとそのままになってしまうので。
短いですが、天王丸さんから伺った件はこれでおしまいです。
きのう、記事が消えてしまった事故のため、無駄に引っ張ってしまってごめんなさい。
読んでいただいた方、どうもありがとうございました♪
メモ:
□ワークショップにするとどんな感じ。
□ログラインを出す。イメージ集め。実際の画像作り。
□面白いログラインの法則がわかるまでってどう運べば。
天王丸景虎さんに伺った面白い記事を書くための前準備@SF創作講座新年会
お待たせしました!
前回の記事にも書いた、天王丸景虎さんから伺った面白い記事を書くための前準備について書きますね。
率直に書きます。
ずばり、
1、ログラインを書く
2、パッケージとコンセプトを先に作ってしまう
伺ったのは、以上の2点です。
1、のログライン書く、とはどういうことか。説明していきますね。
例『プラネテス』
ログライン:宇宙飛行士がサラリーマンになった時代のラブストーリー
例として『プラネテス』というアニメーションの物語についてのログラインについて伺いました。宇宙には、活動停止した人工衛星がそのまま漂っていたり、打ち上げられたロケットの燃料タンクの残骸が回収されずに残っていたりします。こういった、宇宙を漂う「デブリ」と呼ばれている宇宙ゴミ回収のお仕事に従事する宇宙飛行士(サラリーマン)の恋愛を描いたものだそうです。
内容がすぐにわかり、「面白そう」と興味を持ち人に話せる一行であること。そして、新しいお話を考える時は、このログラインを作ってから梗概や物語を作っていくことが面白さを外さない秘訣だとか…。
ここまで読んで、「どこかで聞いたことがある」と思われたかた、そうなんです!
『SFの書き方』で、藤井先生もしくは冲方先生がおっしゃっていた、あの方法です。
天王丸さんからは、より具体的に実践に落とし込む方法を伺いました。新しい物語を作る際、ログラインはひとりで5つ以上出すことが望ましいそうなのですが、その先があって、それは、人に見せてどれが面白いか本気で答えてもらうことなのだそうです。
たとえば10人いる会議室で同じテーマでログラインを一人5つ以上だす。どれが面白いか本気で手を挙げてもらい、5つ以上挙手があったログラインは面白い。
または、Twitterの4択アンケートを使ってフォロワーさんに聞く。そしてそれを多人数で行うイベントとして、ハッシュタグを作るなども、より面白さがあるログラインを探す試みの例として伺いました。
何人かに見せて法則性が見えてきたら作りやすくなる、とのことでした。
では、具体的にログラインを作成するにはどうしたらよいか。そういった場合は、AmazonプライムやNetflixなどにもある海外ドラマの一話目(短くてコンセプトが多い)を見て、こういう風な魅力を伝えようとしているんだ…。というところを捉え、この物語を一行で表すとすると…。と考えていくと、できるそうです。
そのほか面白い物語を摂取することについて、映画を社員で見てそれぞれ感想を言う時間を意図して設けている小島プロダクションのお話を伺いました。週一で映画会をしているとのことでした。
伺っていて、これって、ワークとして自主勉強会で取り入れてみたら、力がつくのではないかなと思い、ワクワクし、こうしてご報告しています。
もちろん、ゲームや映画のシナリオとは違い、小説を書くという行為は基本的にひとりで、一言では表しきれない表現のためにある、という思いを持たれる場合もあるかと思います。私も時によってはそう思っているひとりです。ただ、こういった試みに参加することで、個人的な枠を超えた新しい表現方法や自分に出会えることもままあることなのだな、と実感したことがあったので、お伝えしてみました。
2、パッケージとコンセプトを先に作ってしまうへと向かうつづきを書きたかったのですが、ごめんなさい。先ほどまで途中まで書いていたこの忘備録、一度消えたのを書き直しているため時間切れになってしまいました。
天王丸さんは毎日のお仕事でシナリオチーフやディレクターを務められ、物語のエンターテイメントとしての「面白さ」を追及するチームワークに従事されている方ですので、具体的な実践に落とし込む詳細を伺えて、ほんとうにワクワクしました。
また明日の夜、更新いたしますね。